72ぽっくりパン


72.  ぽっくりパン

72 ぽっくりパン

女(おんな)の子(こ)用(よう)の下駄(げた)の一種(いっしゅ)です。


かこ先生のむすめさんは、七五三(しちごさん)の晴着(はれぎ)に履(は)いていました。 


着(き)なれない着物(きもの)に足元(あしもと)は、それまで履(は)いたことのないぽっくりは大変(たいへん)だったようですが、本人(ほんにん)は、日常(にちじょう)ではあじわえない、お姫様(ひめさま)になったような気分(きぶん)だったそうです。


てんちゃんのはきものがうらやましいだるまちゃん。

だるまどんがだしてくれたはきもののなかに、おめあてものはありませんでした。だるまどんのまえには黄色(きいろ)い鼻緒(はなお)でぬりもののぽっくりがありますね。

だるまどんのうしろには、赤(あか)いぽっくりもみえます。

『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)より

『伝承遊び考』(小峰書店)より

じゃんけんをはじめるときの掛(か)け声(ごえ)には「じゃんけんぽん」のほかに「あいちゃんぱ!」のような短(みじか)ものが多(おお)くつかわれます。

一方(いっぽう)で非常(ひじょう)に長(なが)いものもあり、その中(なか)の一(ひと)つに「ぽっくりげた」の後(あと)に言葉(ことば)がつづくものがあります。

 1700以上の資料をもとにまとめた『伝承遊び考』(小峰書店)より、1つだけご紹介(しょうかい)しましょう。

「じゃんけん ぽっくりげた ひよりげた あいては ぱっくりげた あずまげた ころんではをかき しかられた たんたんたぬきの のどちんこ こんこん きつねの やせしっぽ」(埼玉)

『伝承遊び考』(小峰書店)より

あさのお手伝いをするこどもたちがいます。

昭和時代(しょうわじだい)のなかばまで、牛乳(ぎゅうにゅう)はこのようにびんいりで、それぞれの家(いえ)戸口(とぐち)におかれた専用(せんよう)の箱(はこ)に届(とど)けられました。

くつみがきのところには、お父(とう)さんのげたとこどもようのげたもあります。

『ことばのべんきょうくまちゃんのいちにち』(福音館書店)より


もうげたはあまり履(は)かれないのに、下駄箱(げたばこ)といういいかたは、いまでも使(つか)われます。

かこ先生がふるさとにいた幼(おさな)い頃(ころ)、履き物といえば、雪(ゆき)の季節(きせつ)の長靴(ながぐつ)をのぞけば、「ぞうり」か「げた」でした。

げたかくしのあそびは、かくしたはきものを鬼(おに)がさがすようすを見(み)ることができるので、「かくれんぼ」いじょうに、こどもたちは夢中(むちゅう)になったのだそうです。

『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』(文春文庫)より

長(なが)ぐつで、げたでお天気(てんき)うらない⋯

『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』(文春文庫)より


かこ先生(ひだりはし)が川崎セツルメントでこどもたちと遊(あそ)んでいた、1950年代(年代)の写真(しゃしん)です。  写真提供=加古総合研究所)

足元(あしもと)を見(み)ると、げたをはいている人(ひと)がいます。

かこ先生も1960年代までは、近所(きんじょ)をげたで歩(ある)いていました。

道(みち)がアスファルトの舗装(ほそう)になってからは、音(おと)がうるさいということもあり、また、いまのような布(ぬの)やゴムなどの靴(くつ)が普及(ふきゅう)し、下駄(げた)をはく人(ひと)は、めっきり減(へ)ってしまいました。

下駄(げた)の足音(あしおと)をきいたことがありますか。

                                                  

『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)より


「ぽっくりパン」のおはなしはこれでおしまいです。

『おおきいちょうちん ちいさいちょうちん』(童心社)より